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「人生はどこでもドア:リヨンの14日間」感想考察

稲垣えみ子著「人生はどこでもドア:リヨンの14日間」を2回読み終えました。53歳のオバサン(原文ママ)が何の準備もせずにリヨンに旅立っちゃうという内容です。観光やツアーにとどまらない新たな旅の形を提案してくれています。旅行や旅に少しでも興味がある方にとてもおすすめの一冊です。

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以下感想や私の考えを書いていきたいと思います。エッセイなのでネタバレがあっても大丈夫なのかな。

 

 

はじめに

このレビュー記事を書くにあたり「人生はどこでもドア」を2度読みました。初めて読み終えた時点では主観的にしか本をとらえることができず、なかなかにネガティブな感想しか出てきませんでした。自分を一歩引いてメタ認知してより客観的に味わうためもう一度読み直すと、今度はとてもおもしろく好奇心をかきたてられる内容だったと気づくことができました。非常にポジティブな感情です。

 ではなぜ、二度で正反対の感想になったのか。それはこのエッセイの内容と私自身の経験が大きく関係しています。

著者の稲垣えみ子さんが最低限の荷物でフランスのリヨンに行き、民泊のAirbnbで部屋を借りて観光などはせず買い物して自炊して普段通りの生活をします。日本から遠く離れた異国にまでわざわざ行ってあえて日常生活を送るということは、なかなか考えつくものではなく新垣さんにとっても読者にとっても逆に新鮮に感じるだろうと思います。

ですが、実は私は新垣さんと全く同じ経験をしたことがあるのです。私は過去に一週間ぐらいリヨンにAirbnbで部屋を借りて自炊して日常生活をしたことがあります。しかも同じことを4回ほど同じ内容でリヨンに行きました。新垣さんはクロワ・ルースに滞在し私はペラーシュやベルクールにいたという点では違いますが自転車で15分ほどの近さですのでほとんど同じ場所です。さらに私もカフェに行ったりマルシェにいったりという程度で、新垣さんと同じような生活をしていました。

私は本や映画には新しい出会いを求めます。新しい知識はもちろん、新しい(疑似)体験や新しい感情を欲っします。新垣さんの体験と私の経験がほとんど同じであったため、そういった新たな出会いがあまりなかったのです。もちろん新垣さんと私は同一人物ではないので同じ出来事に対して抱く感情や考えは異なりますが、リヨンがあまりにもリアルに想像できるので出来事に対する反応もほぼほぼ想定できてしまうのです。そういう意味では新体験は全くなかったといっていいでしょう。

ですのでこの本は初めて読む時点ですでに二度目の感覚だったのです。好きな映画がリメイクされるのが昔の映像を解像度を高めて焼き直ししただけみたいな、新型のアイフォンが出るのがバッテリー容量が増えて画面の大きさが変わっただけみたいな。がっかりというか肩透かしを食らうというか。今回の場合は私が勝手にハードルを上げてただけですけれど期待を裏切られた感覚でなんじゃこりゃという感想になってしまいました。

しかし私は同じ本を何回読んでも楽しめます。ネタバレされた映画を見ても楽しめます。心を入れ替えて二度目を読み直してみると(実質三度目)、とてもおもしろく自分がリヨンにいた時のことも思い出しつつ楽しめました。

それではやっと本の内容に入っていきます。笑

 

新しいことにチャレンジするということ

「人生はどこでもドア」の根底にあるものは「新しいことにチャレンジする」ということだと思います。今まで知らなかった世界、したことがなかったこと、自分にはできないと思い込んでいたこと、これらに挑戦するには大きなエネルギーが必要です。生物には恒常性という機能が備わっています。私たちの文化的な側面にも同じように恒常性が備わっており、私たちは知らず知らずのうちに現状を維持しようとしています。新しいい物事は平穏な日常に訪れる黒船です。どうなるかわからない、知らないものは怖い、死ぬかもしれない。現状がよくない状態であったとしても未知のリスクに侵されるよりマシだと考えてしまいます。

 しかし、あえて新しいことに挑戦してみる。それが良いものか悪いものかはわかりません。でも勇気をもって飛び込んでみるとそこには何かがある。何もなくてもチャレンジしたという経験は残る。新たな体験や経験をすることで自分の知識や見分が増えます。自分の価値観が大きく変わってしまうこともあります。井の中の蛙大海を知る、です。自分が変わるのはとても怖いですが、同時に達成感や自信、満足感などを得ることができます。自分を変え続けなければならない、とまでは言いませんが、新しいことにチャレンジし続けることは長いスパンでみると確実に人生を豊かにするのだろうと思います。

稲垣さんのリヨンでの経験はすべてが新たな挑戦です。海外一人旅、Airbnb、言語が通じない、知らない食べ物、旅行先で普段の生活。私たちの普段の生活では経験できないことに新垣さんは挑戦し、さらに書籍にして私たちに紹介してくれました。この本を読むことで私たちも新しいことにチャレンジするということを疑似体験できます。本は素晴らしいですね。

 

旅行・旅について

「旅行」と「旅」と聞くとどのようなイメージが湧くでしょうか。旅行はツアーとかですべてが計画されていて型にはまっているとか、旅は自由に放浪して荒々しい感じとか。旅行は安心だけど旅はちょっと不安とか。旅行や旅というと観光スポットやご当地グルメといったものを期待します。しかし、現地に住んでいる人からしたらどうでしょう。おそらくは日常の一風景でしょう。私たち日本人でいうと東京タワーや寿司のようなものです。そこにあって当然であり、格別取り立てる必要はありません。

「人生はどこでもドア」は全く新しい旅行/旅の形を提案してくれています。これを旅住と名付けましょう。旅住は旅先を地元にする方法です。旅先でアパートに住み、地元のスーパーで買い物し、自炊して洗濯して掃除するのです。観光客が集まるレストランを素通りして現地に根付いたカフェに入るのです。現地の日常をそのまま過ごします。今はAirbnbのおかげでだれでも簡単に民泊することができるようになりました。いい時代です。

旅住は新しいことです。旅住をすることにより新たな観念を抱くようになります。例えば異質なものに対する許容心です。人種や肌の色が違えどみんな同じ人間です。飯食って歯磨いて寝るんです。自分はこの大きな共同体の一部なんだなということが身にしみて感じられます。日本は島国だからか日本人は違いに敏感で同調圧力が強い気がします。そんなに片意地張らなくても 他人を他人として尊重できればいいなと思います。

 

フランス、リヨンについて

フランスはデモクラシーの国です。不当な政治に対し民衆が立ち上がり自由を勝ち取ってきた歴史があります。現在のフランス人がどこまで意識しているかは定かではないですが、間違いなくその精神は受け継がれていることでしょう。休みが多いとか自分の仕事しかしないとか不愛想とかはそれによるものでしょう。ちゃんと要求すればちゃんと仕事してくれます。また、フランスは多人種国家です。みんな違っているのが当たり前です。そのため自己を確立するためには自分を強くもたないといけません。自分に自信をもっていて誇り高い人が多い気がします。服装もそうですね。流行に流されることなく、自分が似合うと思っている服を着続けます。

フランスのお店の90%以上が個人経営だそうです。チェーン店は本当に見かけません。古い建物や景観を大事にしてるから構造的な問題があるのか、はたまた別の理由があるのかわかりません。そのためかレストランやカフェはとても個性的でとても楽しいです。正直フランス人は料理がヘタクソだと思います。調理の仕方はいいのにソースが死ぬほどまずい。街中のレストランに期待してはいけません。美食の街といわれるリヨンでそうなので絶望的です。一方、カフェやパン屋さんはとても素晴らしいです。こだわりのコーヒーや手作りのお菓子はびっくりするほどおいしいです。フランスパンにも様々な種類がありどれも安くてうまい。フランスを訪れた際はぜひカフェとパン屋めぐりをしてみてください。

 

「どこでもドア」とは

 稲垣さんはリヨンでの経験から、これから地球上どこへいっても自分はやっていけると思えるようになったといいます。このことを「どこでもドア」を手に入れたと表現しているのです。自分はやっていけるんだ、通用するんだ、つまりは自信がついたということです。

この感情はとてもとても大切です。旅行に限らず、生活全てにおいて自信があれば、自己が確立できれば、何事もうまくいきそうな気がします。新たなチャレンジができるようになるのです。そしてそのことがまた自信につながります。自信が自信を呼ぶのです。

では、どうやって自信をつければいいのか。ここまで読んでくれた皆さんはきっとおわかりでしょう。そう、新しいことにチャレンジするのです。好循環のはじまりのスイッチを押してあげるだけです。

 

おわりに

 つらつらと取り留めもない私の思考を書いてきました。「人生はどこでもドア」に書いてあることはほとんど知っていたことだった、と書きましたが、この本を読んだおかげで自分の考えがより明白に整理できた気がします。

この本には”新しいこと”がたくさん詰まっています。ぜひ皆さんも「人生はどこでもドア」を読んで、新しいことにチャレンジしていってください。